口笛
投稿日2003/09/22 作者夜澄 サイト メール
作品傾向--ほのぼの
CP傾向--同性カップリング
出演--澤村×成瀬
作品紹介--澤村視点。短文。
コメント 読み返してみると全然ほのぼのじゃない。嘘つきな私(苦笑)
書き始めはほのぼの書く気満々だったんですけどねぇ…。

成瀬が口笛を吹いている。
俺の部屋、床に寝そべって雑誌を読みながら。
曲は昔はやった純愛モノか。はっきり言って趣味じゃない。
だが、部屋の中に響き渡るその音は何故かとても心地いい。
時々音がとんでるし、正直上手いとは言い難い。
それでもこれは、成瀬が作り出した音。それだけでこんなにも安らぐ心。
それなのに、そう思う心とは裏腹に。
音を奏でるその唇を見ていると、タマラナイ。
ほんの少し突き出したその唇、誘っているのかと聞きたくなる。
成瀬にそんなつもりは毛頭無いと分かっているが。
その唇を見ていると何かが腹の中を駆け巡る。その音は俺の心を落ち着かせる。
ああ、なんて矛盾だ。
俺の視線に気がついたのか、成瀬が顔をこちらに向ける。唇の形はまだそのままだ。
それを正面から見てしまった。やばいかもしれない。キスを強請っているように見えちまった。

「なに?」
「別に」
「…へんなの」

首を傾げた成瀬に俺の劣情を気付かれたくなくて、素っ気の無い態度で応えた。
成瀬は不思議そうな顔をしたが、すぐにまた視線を雑誌に移し口笛を吹き始めた。
人の気も知らないでのん気なもんだ。腹の中にあるものは成瀬の音ではもう抑えきれない。
その唇ごとその音を飲み込んでしまったら、少しはましになるのだろうか?
まあ、やってみなくちゃ分からねーか。なあ、成瀬?
心の中で問い掛けると俺はゆっくりと動き出した。

その後、優しい音色は無くなった。
代わりに響くは、甘い、声。

END
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