結婚しようね ★マネ (ドリーム小説です。)
投稿日2003/05/20 作者秀蔵 暁(羽柴綾香) サイト メール
作品傾向--ゲーム
CP傾向--異性カップリング
出演--小林純直×女子マネ
コメント 小林さんと女子マネ=は既につき合っているという設定です。
ホワイトデーのお話です(今いつよ!?季節はずれですみません)。
普段の自分の話よりもラブラブ甘々を目指しました。
「あー、綺麗」
 ショーケースの中の数々のピアスを覗き込んで、がうっとりした声を上げた。
 キラキラと輝くピアスの石と同じようにその瞳が輝いている。
「でも、高いなぁ」
 値札に目を遣って溜息を洩らす。ピンからキリまで揃っているが、のお小遣いでは安いものでも少々値が張る。
 バイトでもしてればなあとしょんぼりと肩を落として、居心地悪そうにしている小林純直へと視線を移した。
「ここに何の用ですか?」
 ぱたぱたと音を立てて純直の隣へと戻ると、不思議そうに首を傾げた。
 いつものように部活後に一緒に帰る途中、寄る所があると言った純直について来てみれば、大凡彼には似つかわしくないアクセサリー店であった。
「あ…いや」
 慌てた様子で口ごもる純直を訝しげに見てから、ショーケースに目を落とす。ここは指輪のコーナーらしい。色々なデザインの指輪が並んでいる。
「あー、いいなぁ…」
 ショーケースに張り付いて、がまた溜息を洩らす。
「こういうの好きか?」
 先程から黙ったままだった純直が口を開く。彼は何故か酷く緊張しているようである。店に入ってからずっとショーケースの中の指輪を睨み付けているように見えた。
「はい。女の子ですから」
 が振り向いて微笑う。サラサラと髪が流れて照明の光を返した。
 ふっとつられて純直が微笑う。そして、またショーケースに目を落としたに問いかけた。
「…そうか…どの石が好きなんだ?」
「石?…アメジストです」
 答えるの視線は先程から一点に集中している。気に入ったものがあるらしい。
 純直はそれがどれか測りかねている。予測を立てようにも石の種類が分からない。
「…どれの事だ?」
 と同じようにショーケースを覗き込んで訊ねる。その顔が酷く近くにある事に二人とも気付いていない。
「この紫の石です」
 が数ある指輪の内一つを指差す。先程から彼女が瞳を輝かせて見ていたのは多分これだろう。
 純直はその値札に目を遣った。
「誕生石か?」
「いいえ。私の誕生石はピンクトルマリンとオパールです。アメジストは2月ですね」
 続けて問いかける純直にが一つ一つ指を指しながら答える。
「そうか…」
 頷く純直は何かを思案していて、の手元は見ていない。
「はい。小林さんは1月だからガーネット…」
 笑顔で振り向いたが間近にある純直の顔に気付いて、かあっと顔を真っ赤にしてずざざっと後退った。
 高鳴る胸の動悸を押さえようと深呼吸をする。頬に触れると熱かった。
 赤い顔で純直に目を遣ると、彼はの様子には気付かずにショーケースを見たままであった。
「あの…小林さん?」
「すみません。これ、見せて貰えますか?」
 が怪訝そうに声をかけるのと、店員に純直が声をかけるのとが同時だった。
「サイズは?」
 店員に問いかけられて純直がを見た。
「?」
 きょとんとしたに店員がにっこりと笑いかける。
「彼女でしたら10、11号位だと思いますが、合わせてみますか?」
 の指を見てそう推測した店員が純直に問いかけた。
「お願いします」
 純直がを促す。
「え?」
 状況が分かっていないに純直は深い溜息を吐くと、彼女に問いかけた。
「…今日は何の日だ?」
「何の日って…ああっ!!」
 首を傾げて考えて、漸く思い至る。
 今日はホワイトデーである。男性から女性へバレンタインデーのお返しをする日。
「…バレンタインの…お返しだ」
 告げる純直の顔は耳まで真っ赤である。
「ええっ!?」
 純直が今日という日の習慣を知っていた事にが驚きの声を上げる。
 何とも失礼な話であるが、実際、純直は部のマネージャーでもあり同級生でもある今川聖から聞くまで知らなかったのである。が驚くのも無理がない。
 そして、色々悩んで今日ここに来たという訳である。
「あの…いえ、でも…高いですし…」
 が顔の前で手を振って申し訳ないと断ろうとする。が、途中で純直の声に遮られた。
「お前のセーターもかかってるだろう?」
 お金もそうだが、手間暇がかかっていると純直の視線が言っている。
「……」
 が黙り込む。確かにお金も手間暇もかかっているので、反論が思い付かない。
 のだんまりを承諾と見なして、純直が彼女の手を取って、二人のやり取りを微笑ましそうに見ていた店員に差し出した。
「えっ、あっ、ああっ!!あの、10号です」
 手を取られて、が以前調べた事があると慌てて答えた。手を引き戻す。
 嬉しかった。まさか純直からお返しを貰えるとは思っていなかったので、飛び上がって喜びたい位嬉しかった。
 はどきどきとしている胸に手を当てて、後に続く純直と店員のやり取りを夢見心地で見ていた。



 二人の家の近くにある公園のベンチに腰かけると、純直は先程買った指輪の包みを取り出した。
 しっかりと包装されていて、リボンまでかけてある。
「じゃ…これ」
 その顔を耳まで真っ赤にして、に差し出す。
 怖ず怖ずと両手を出すのその両掌の上に置いてやる。
「ありがとうございます」
 が胸に包みを抱き締めて嬉しそうに笑う。
「嬉しい…」
「あ、いや…そんなに喜ばなくても」
 の喜びように純直が戸惑った声を出す。それを遮ってが弾んだ声を出した。
「だって、嬉しいんだもん」
「…そうか」
 本当に幸福そうに笑うを見て純直がふっと息を吐く。散々悩んで指輪をお返しに決めたその甲斐もあるというものである。
「開けてもいいですか?」
「ああ…」
 瞳を輝かせて訊ねるに純直は他の誰にも見せない優しげな表情で頷いた。
 がまた嬉しそうに笑う。
 丁寧に包みを開けてケースを開くと、先程が見入っていたアメジストの指輪があった。
「わぁ…」
 が感嘆の声を漏らす。
 手に取って夕陽にかざしてみる。指輪は夕陽を返してキラキラと煌めいている。
「えへへ…ありがとうございます」
 笑顔でもう一度お礼を言うと、左手に持ち替えて右手に填めようとする。
 純直がその手を止めてから指輪を取り上げた。
 不思議そうに首を傾げたの左手を取ると、その薬指に指輪を填めてやった。
「えっ?小林さん?」
 左手薬指に指輪を填められて、が顔を真っ赤にして純直を見上げる。
 いくら純直でも左手薬指の意味は分かっているだろう。
「いずれちゃんとしたものを買ってやる。それまでこれをしててくれ」
 の瞳に映る自身を見詰めながら、純直が彼女に告げる。
「えっ!?それって…」
 が更に顔を赤くして声を上げる。普段鈍いわりに今回はその意味に気付いたようである。
「嫌か?」
 問いかける純直の顔も真っ赤である。
 まるでプロポーズしているみたいだと、自分の言った言葉に自分で照れていた。
「いいえ!!」
 ぶるぶると勢いよくが首を振る。動きに合わせて揺れた髪が辺りを染める夕陽を返して煌めいた。
「楽しみに待ってます」
 花が咲きこぼれる瞬間のような笑顔で笑うに純直は眩しげに目を細めた。
 愛しいと改めて思う。
「…いいのか?」
 深く考えてなさげなに確認の意味を込めて訊ねる。今ここで人生を決める決断をして欲しいと思っている訳ではないが、がどう思って言った言葉なのか知りたかった。
「はい」
 が頬を染めてこっくりと頷く。
 恥ずかしそうに俯いた顔を覗き込むと、その瞳に揺れていたのは恋慕の炎。未来を夢見る心。
 目は口程にものを言うという言葉は本当だなと頭の端で思う。
 自分を見上げてくる熱を帯びて潤んだ瞳を純直は見詰め返した。
 視線が絡み合う。
 見詰め合って、そして純直はの頬に触れた。頬にかかっていた後れ毛が純直の手を擽る。
 もう片方の手での手を握ると、は戸惑いで一瞬その瞳を揺らして、そしてゆっくりと瞳を閉じた。
 純直はの額に軽く口付けてから、その口唇にそっと口唇を重ねた。
 口唇を離して瞳を開くと、間近に相手の顔があって、互いに照れ笑いしながら俯いた。
「……」
「……」
 甘い沈黙。
 そして、純直はの肩を引き寄せて抱き締めた。
 は一瞬驚いたように純直の顔を見上げて、そして小さく微笑ってそのまま彼に身を預けた。
 互いのぬくもりが心地良い。
 そのまま二人は暫く抱き合っていた。
 二人一緒の未来に想いを馳せながら。
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